高遠弘美訳『失われた時を求めて』

失われた時を求めて 2: 第一篇「スワン家のほうへⅡ」 (光文社古典新訳文庫)                                 
『失われた時を求めて 』は マルセル・プルーストによって20世紀初頭に書かれた長い長い小説です。

どれくらい長いかというと、邦訳は14巻なのですが、光文社古典新訳文庫では毎年1巻ずつ新訳を刊行してゆくということなのです。14年越しの壮大な読書です。
さて、この小説がどんなものか端的に説明した言葉があるので引用します。村上春樹の「1Q84」からです。
高円寺の隠れ家に身を潜めた青豆と、補給支援するタマルとの電話での会話です。

「プルーストの『失われた時を求めて』はどうだ?」とタマルは言う。「まだ読んでなければ読み通す良い機会かもしれない」

「あなたは読んだ?」

「いや、俺は刑務所にも入ってないし、どこかに長く身を隠すようなこともなかった。そんなことでもないと『失われた時を求めて』を読み通すことは難しいと人は言う。」

つまり、長くて冗長なお話ということです(^_^;)

 まず第1巻の冒頭では、主人公である「私」が眠りについて語ります。これが長い!眠りについて幾重にも幾重にも比喩が用いられ、延々語られます。やがて眠りの床から家族の描写が始まるのですが、これがまた大家族で関係が複雑です。
この本の読みにくさはまた注釈の多いところです。もしこの本に挑戦したいという方がいらしたら、注釈にはこだわらないことと比喩がわかりにくくてもとりあえず読み進む勇気を持つことをおすすめします。

「スワンの恋」では文字通りスワンという一人の男性の恋が「私」によって語られます。
この小説は「私」による一人称小説(のはず)なのですが、「土地の名・名」において「私」はスワンの娘に恋をするので、スワンの恋は「私」の生まれる前の話ということになります。
スワンはオデットという高級娼婦に出会い、恋をし、熱を上げ、そうして見限ります。
しかし、「土地の名・名」の章において「私」はスワンとオデットの娘に恋をするので、どうやらスワンとオデットが結婚したことがわかります。
おおざっぱにいうとあらすじはこんなものなのですが、私は読むのに8カ月かかりました。

第1巻では、いつまでたってもスワン家に行きつかないし、もはや読み続けるのを諦めようかという気になったのですが、2巻まで読破してみると、やはりこの後の展開が気になります。
読み進めているときは、大きなストーリー展開もないので、ただただ退屈に思えるのですが、一旦読み終わったあと、適当にページを開いて部分部分を拾い読みしてみると、実に読み応えのある文章であることに気づかされます。

私は朝の通勤電車でこの本を読んでいるのですが、読んでいる間だけ、私は19世紀末のパリの空気に浸ることができます。フランスには行ったこともありませんが…。

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