悲しみも憎悪も喜びも全て終わっていく。僕の人生もやがては過ぎていく。小さな石の墓の周りを、静かに風が通り過ぎていくように。
M・Mへ
そしてJ・Iに捧ぐ
そのライターの1人称で小説が始まりますが、小説の章と章の間に、その殺人事件のものと思われる資料が差し挟まれます。
ライターの集めた資料だと思っていると、どうも様子が違ってきます。
ライタ一自身が、どうやら観察対象に含まれているようです。
僕の真の欲望は、破滅的な人生を送ることでもない。荒々しいことを求めることでも、見事な芸術をつくることでもない。安定を求め、時々破滅に憧れ、職業は何でもいいから少しだけ皆から羨ましがられること
愛するという行為に少しく狂気が含まれるとするなら、私達は日常の描く軌跡をもっと注意深く見極める必要があるのかもしれません。
ライターが辿り着いた感慨はいささか凡庸と言えるでしょう。しかし、狂気の悪魔と化した人々を前にして、それは重みのあるポイントではないでしょうか。どこで人生のポイントが切りかわるか、その渦中にあっては見極めることが難しいのですから。
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